NAFTAの分かりやすい解説|NAFTA再交渉いよいよ大詰め
昨今話題を集めているNAFTAの再交渉問題。皆さんはこの問題についてどれくらい知っていますか?今回はこのNAFTAについて、そして再交渉についてたっぷり解説していきたいと思います。
NAFTAってなんだっけ?
NAFTAの正式名称は、北米自由貿易協定といい、英語では North American Free Trade Agreementの頭文字を取ってNAFTAと呼ばれています。スペイン語では、Tratado de Libre Comercio de América del Norteと言い、略してTLCANです。
NAFTAの参加国は、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコの三ヵ国。関税障壁を廃止して自由貿易圏を形成する協定で、北アメリカにおいて世界最大規模の貿易圏を生み出しました。1992年12月17日に署名され、1994年1月1日に発効しました。
NAFTAとその他の共同経済圏との比較
参加国数 | 名称 | 人口 | GDP | 1人当たりのGDP |
3 | 北米自由貿易協定(NAFTA) | 4.8億人 | 21兆US$ | 43,885US$ |
27 | 欧州連合(EU) | 5.1億人 | 18兆US$ | 35,939US$ |
10 | 東南アジア諸国連合(ASEAN) | 6.4億人 | 2兆US$ | 4US$ |
NAFTAは、アメリカ、カナダとメキシコ間で貿易と投資を行う際の経済的障壁をなくすことを目標にしていました。NAFTAの発効は1994年1月1日で、メキシコからアメリカへの輸出の半分以上とアメリカからメキシコへの輸出の3分の1以上の品目の関税が即時に撤廃されました。
よって、NAFTAによる貿易自由化が始まった結果、メキシコはマキラドーラによって産業が発達し、さらにアメリカの農業輸入国第2位の規模にまで成長し、国として発展することができました。
逆にメキシコには大量のアメリカ産トウモロコシ(遺伝子組み換えで増産された)が輸入され、零細なメキシコ農民のトウモロコシ生産は壊滅し、農民の多くは都市に流出するか、北方のアメリカ国境を違法に越えてアメリカに向かいました。(現在のトランプ大統領の国境の壁の問題に繋がっている)
メキシコの成長のキーワード:マキドーラについて
マキラドーラとは1965年に制定された、原材料を加工して輸出する場合、製造するときに用いた原材料・部品、機械などを無関税で輸入できる制度。このマキラドーラ制度がNAFTA締結後により活躍したために、アメリカとの国境地帯の所得はNAFTA発効後の10年間で15.5%増加し、メキシコの経済が大きく成長しました。
- アメリカ政府は1917年から1964年にかけて、メキシコから農業日雇い労働者を受け入れていた。
- このメキシコ人出稼ぎ労働者受け入れ政策が1964 年に打ち切られた結果メキシコ国内の失業者増加を招いた。
- それにより、アメリカへの密入国を目指す失業者が増大した。
- その解決のため、雇用拡大に資する産業政策としてマキラドーラ制度が導入された。
NAFTA再交渉とは?
NAFTA再交渉の始まりはアメリカ大統領選挙から。トランプ大統領の選挙公約の中に「強いアメリカ」を取り戻すため、NAFTAを再交渉すると発表しました。その理由はこちら。
- メキシコのマキラドーラによりアメリカ国内で失業者が増加
- アメリカの域内での貿易赤字は2010年で約7.5兆円で、これはアメリカの総貿易赤字の26.8%にもあたる
つまり、アメリカの利益をもう少し増やしたいというのが思惑でした。また、非NAFTA国にはNAFTAから出てくる利益は与えないようにするという意思も汲み取れます。(自動車問題など)
ついに、2017年8月の交渉開始から1年が経過し、大筋合意に向けて大詰めを迎え、米国とメキシコが二国間の暫定合意(8月27日)に達しました。
自動車の現地調達比率引き上げ
アメリカとメキシコは争点だった自動車の原産地規則について、現地調達率を現行の62.5%から75%に引き上げることで合意しました。両国はまた40~45%を、時間当たり賃金が最低16ドルの工場で生産することで合意。米国製の鉄鋼、アルミニウム、ガラス、プラスチックの利用を増やすことも義務付けました。
サンセット条項
トランプ大統領は、協定が5年ごとに再交渉され、合意に至らなければ自動的に廃止になる「サンセット条項」を導入する要求を撤回。企業はサンセット条項について、長期的投資を阻害すると主張していました。
代わってサンセット条項は6年ごとの見直しにシフト。NAFTAには16年の期限が設けられ、見直しを経てさらに16年の延長が可能になる。
NAFTA19条
ライトハイザー氏によると、メキシコは紛争解決手法を定めた19条を除外することに合意。カナダは除外には反対しています。
農業問題
新たな合意では、米国とメキシコ間で取引される農産物は関税をゼロに。農業技術の発展を支援するためバイオテクノロジーの導入に取り組みます。
こちらはアメリカとメキシコが合意したことを伝える日経新聞の記事
アメリカとメキシコ、NAFTA再交渉で大筋合
トランプ米大統領は27日、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡り、メキシコとの2国間で大筋合意に達したと発表した。
焦点の一つである自動車貿易の関税をゼロにする条件に関し、域内での部材調達比率を引き上げる方向だ。
今後はカナダが合流して3カ国で最終決着できるかが焦点となる。トランプ氏は同日、ホワイトハウスで記者団を前に、メキシコのペニャニエト大統領と電話で協議。
「米国の貿易にとって大きな一日だ」と述べ、2国間合意に達したと表明した。
(中略)
トランプ大統領は11月の中間選挙を控えて公約のNAFTA見直しを訴える狙いだ。
引用元:日本経済新聞
これからどうなる?カナダは合流できるのか
最終協議に加わらなかったカナダは現在、NAFTAにとどまるため自動車貿易の新たな条件などについて合意するよう圧力を受けています。
トランプ大統領は、仮にカナダが譲歩せず3カ国合意が成立しなければ、NAFTAを「米メキシコ貿易協定」に名称変更し、カナダ製自動車に関税を課すと表明しています。
アメリカ・メキシコ間の合意内容の詳細はまもなく発表されます。その発表を待ちましょう。