メキシコで1人の早稲田大生が立ち上げた水泳教室事業が面白い!

ロングインタビュー企画(田所輝さん):1人の学生がメキシコで新事業を作りあげたバイタリティーに迫る

学生ながらメキシコシティにて1人でスイミングスクールを立ち上げ、現在4ヶ国の生徒約35名を指導している田所輝さん。今回のインタビュー企画では事業が成り立つまでの経緯と彼のバイタリティーの原点に迫りたいと思います。

プロフィール

田所輝(たどころ ひかる)
大学:早稲田大学社会科学部在学中
年齢:22歳
出身校:湘南工科大学附属高等学校

※インタビュアー:田中

田中:こんにちは。今回はメヒナビで初めてのインタビュー企画になりますが、宜しくお願いします。

田所:こちらこそ宜しくお願いします。

田中:まず田所さんがメキシコに来るきっかけは何だったのでしょうか?

田所:その質問はよく聞かれます。(笑)

メキシコに来たきっかけとは

田所:昨年カナダに1年間留学していて、メキシコ人の友人が多くできました。それがメキシコに興味を持ったきっかけで、カナダのカレッジでスペイン語を勉強していたこともあり、インターン先で中南米を考え始めました。そうしたら、メキシコシティでインターン生として受け入れてくれる企業があり、今年の3月末に来墨しました。もともとはアフリカをインターン先に希望していたんですけどね。

田中:どうしてアフリカではなくメキシコになったのですか?

田所:アフリカには8ヶ国ほど旅行で訪れたことがあり、ずっと興味を持っていました。しかし、希望のインターン先から今の時期は忙しいから違う時期にまた、アプライして欲しいということを言われて、半年間違う地域でのインターンを探そうと思ったんです。結局メキシコに1年間いることになったんですけどね。ラテンの国には行ったことがなかったので自分の中でも新しい挑戦でした。

田中:色々なことが重なってメキシコになったのですね。1年間に期間を延長した理由は何ですか?

田所:インターンの期間中に自分1人でスイミングスクールを立ち上げたので、責任を持ってより長い期間でやってみたいと思ったからです。それに、自分の好きなことができるメキシコの環境をとても気に入ったからです。タコスも美味しくて最高です(笑)

スイミングスクールの開校

田中:スイミングスクールを立ち上げたのはいつ頃だったのですか?

田所:今年の4月に構想を始めて5月から事業をスタートしました。

田中:3月末にメキシコに来たすぐ後のことですね。

田所:そうなんです。インターン先の企業がベンチャーだったこともあり、上司の方から何か自分で新しい事業を作ってみればと言っていただきました。そこで自分にできそうなのが水泳を教えるくらいしかありませんでした。日本でも水泳のコーチをしていたので。

田中:そこからよく実行に移しましたね。

田所:考えて色んな人に相談しているうちにメキシコならうまく行くかもしれないと思うようになりました。なぜなら、メキシコには想像以上に日本人の駐在の方が多くいてお子さんもいらっしゃいます。しかし、日本人のあるお母さんとお話しした時に、メキシコは習い事の選択肢は少ないし、子供を1人で外に遊びに行かせられるほど治安が良くないということを伺い、日本人コーチへの需要は間違いなくあると思ったんです。

特に水泳は日本で人気No.1の習い事とも言われていますから、3〜4年の任期で日本に帰る駐在の方からすると、その間に子供を泳げるようにさせたいと考えるのではと思いました。もしこれが違う国ならうまくいかないと思います。

例えばアメリカだとクラブチームも盛んですし、水泳の人気はもともと高いです。他の中米の国だと日本人の駐在の数は極端に少なくなります。そのようなことから日本人の視点で、メキシコの水泳市場は圧倒的に比較優位をもったブルーオーシャンであると感じたのです。次の日にはチラシを作り、ビート板や補助具の購入に出かけました。

現在スイミングスクールの規模は?

田中:現在はどれくらいの規模でどのようなレベルのお子さんたちが在籍しているのでしょうか?

田所:短期教室を含めると約35名の生徒さんを教えています。4歳から13歳まで幅広い年齢で、レベルも様々です。顔を水につける練習をする子供もいますし、クロールを練習する子供、本格的に選手を目指していく子供もいます。基本はプライベートレッスンなので、兄弟で同時に受講しても最大で4人程度になります。

その分、質の高いレッスンができているので、子供の技術向上は短期間でも成果がでていると親御さんにも言ってもらっています。レッスンはとにかく純粋に、子供たちに水泳を楽しんで欲しい、小さな成功体験を積んで欲しいと思ってやっています。

田中:日本での指導経験もあったと伺いましたが、今までの水泳の経歴を教えて頂いても良いですか?

田所:3歳から水泳を始めて、選手として中学生までは順調でした。当時は全国大会で活躍していました。しかし、高校に入ってからは結果が出ずに苦しい思いをしました。今となっては良い経験だと思っていますが、当時はプレッシャーなど本当に辛く、大学では何か違うことをやりたいと思っていたんです。そこで大学ではフィンスイミングという競技を始めて、日本代表の遠征に行かせてもらったりしました。同時にスイミングスクールでのアルバイトを始めました。最初は決して子供に対して上手くコミュニケーションを取れるわけではありませんでしたが、3年間で自分の指導方法をかなり確立できました。

田中:なるほど。水泳に対しては多くのの専門知識を持っているのですね。先ほどおっしゃていた最初の構想期間ではどのようなことを考えていたんですか?

田所:スクールとしてどういう形態をとるのか、生徒をどうやって集めるのか、価格設定をどうするのか、メキシコシティ以外にビジネスをするのに良い都市は無いのかなどを調べました。実際に地方都市を訪れたり、地方で活躍している日本人に直接電話をかけさせて頂いたりもしました。

田中:すごい行動力ですね。その中でなぜメキシコシティになったのでしょうか?

田所:今でこそ外国人の生徒が増えましたが、最初はターゲットを日本人に絞っていたので、日本人が数万人単位で多く住むメキシコシティと自動車工場が集まる北部地域が候補でした。その中でも、プールの環境の違いは決定的でした。メキシコシティに住む多くの日本人はポランコという高層マンションが立ち並ぶ地域に住んでいますが、それらのマンションほとんどにプールが付いています。

先ほど説明した治安の関係もあって、自宅マンションでのプライベートレッスンは確実に需要があるだろうと思いました。それに地方都市は日本人の子供が通うスイミングスクールが既にほぼ決まってしまっていて競合が強いという理由もあります。

メキシコのスイミングスクールの実情とは

田中:どこかのプールを借りなくても良いというのは大きなアドバンテージですね。田所さんからみて現地のスイミングスクールのレベルはどうですか?

田所:もちろんポランコ以外でプールが付いていないマンションに住んでいる方もいるので、借りられる地元のプールも必死に探しましたが、どこもだいたい既存のクラス以外では使えないと。メキシコシティ内のプール20件くらいは行きました。やっと1件見つけたところで今は週に3回借りることができています。現地スクールですが、指導者のレベルは正直かなり低いです。それは特に日本人の親御さんも日本のスクールを知っているからこそ感じるようで、私のスクールに来て頂ける1つの理由になっています。

田中:メキシコの指導者のレベルが向上するためにはどうしたら良いと思いますか?

田所:難しい質問ですね(笑)私が語れるほど偉い立場にはないですが、メキシコの水泳に対するポテンシャルは高いと思っています。日本の競泳のナショナルチームが毎年サンルイスポトシに合宿に来るなど、場所によって環境が十分に整っているし、メキシコシティでも普段から標高2000メートル以上の高地トレーニングができるので、とんでもない選手が出てきそうです(笑)

ただ文化として水泳が根付いていないので、現地の学校教育でも教えられていないみたいですし、優秀な指導者が出でくるのはなかなか難しいのかなと思います。そんな中で、私のレッスンを見ていたメキシコ人コーチが後日指導法を真似ていたということを生徒の親御さんから聞くことが多々あり、他のコーチとの情報交換も最近始めました。少しずつ変わっていってくれれば嬉しいです。

田中:メキシコ人コーチにも影響を与えているのですね。短期間でそれだけの影響力をもったのは本当にすごいと思うのですが、最初はどうやって生徒を集めたのですか?

田所:最初は本当にゼロからのスタートだったので自分にできることは全部しました。周りの方に紹介してもらったり、影響力のあるメディアに営業に行って、ご好意で何の実績もない私を取り上げてもらったりしました。現地の日本人学校の校長先生に電話してホームルームでチラシを配ってくれないかとお願いもしました。これはさすがにできませんでしたが、今は日本人学校の少年サッカーチームのコーチもやらせて頂いていて、そこで多くの親御さんとコミュニケーションをとらせてもらっています。

口コミと体験レッスンがスイミングスクール大人気の秘訣

田中:最初の生徒さんが入った時はどんな気持ちでしたか?そして今のお仕事で充実感を得るのはどんなときですか?

田所:最初の生徒さんが入った時は本当に嬉しかったです。メールを何度も確認しましたし、最初は誰も集まらないのではと不安だったので。10人集まるまでが大変でした。そこからは、親御さんの口コミで広がりが早くなり、本当に感謝しています。最近ではプールサイドで見ていた外国人の方も私のレッスンを受けたいと言ってくれるようになり、現在は2割から3割の生徒が外国人で英語でレッスンしています。充実感を得るのは、子供達が私のレッスンを楽しみにしてくれているということです。

金銭だけのビジネスで終わらずに必要としてもらえているのは、メキシコにいる意味を再確認する瞬間です。また、何よりも子供達の成長を感じられるのが楽しいです。私自身が楽しみながらやれているときは、子供の反応も良く、吸収が早くなるので、私と子供達が一緒に楽しめる要素もレッスンに取り入れるようにしています。おそらくレッスン中の精神年齢は彼らと変わらないと思いますよ(笑)

田中:今までの話を聞いていると、とても順調に広がっていったようですが、逆に失敗だったことなどはありますか?

田所:最初は順調ではなかったです。最初の2ヶ月は料金の問題で多くの生徒さんを逃していました。完全な失敗ではないですが、価格設定は最初により熟慮するべきでした。日本の相場よりは安い設定ですが、メキシコの現地の相場よりは4倍近い料金でスタートしました。これでは高すぎるということで、実は1度値下げをして現地相場の3倍にしました。それでも料金が高いという理由で、スクールに入らないという声を多く聞き、焦る気持ちから、さらに値下げしようかと検討しました。

しかし自分のレッスンの価値に自信を持っていたので、それ以上はしませんでした。今では正解だったと思っていますし、自分の中ではより良いサービスを提供しようとするのは当たり前で、それをいかに受講者に理解してもらえるかが大事だと考えていました。今まで体験レッスンの受講者は100%入会してもらえています。

田所さんのスイミングスクールでしか〇〇はできない?!

田中:そのレッスンの価値が理解してもらえるようになったということですね。田所さんはそのレッスンの価値が具体的にどういうところだと思いますか?

田所:まず子供に水泳を楽しんでもらって、少しでも達成感を味わってもらうこと、また親御さんにもその時間を使って、子育て以外のことをできるようにすることです。多くの親御さんがレッスン中に自宅に戻ったり、プール横のジムで運動したりしています。それもレッスンの1つの意味だと思っています。ただ、それらは他のコーチでも提供できることです。

私のレッスンの最大の特徴はコミュニケーションにおける満足度だと思っています。レッスン中の私は普段の私とはかなり違います。レッスン中1時間はミュージカルで演技しているような気分です。というのも、せっかくのプライベートレッスンなので親御さんの意見をできるだけ聞きながら、子供達それぞれの最適になるようにいつも努力しています。例えば、クロールを練習している子供に対して「次上手に泳げたら練習最後にするから、一番綺麗な泳ぎを見せて」と言うだけで、言わない時とは効果が大きく変わります。そのようなコミュニケーションの使い分けが、子供に楽しんでもらいながら上達してもらうために決定的に重要です。それができないと私がどんなにスキルを持っていても無駄になってしまいます。

田中:とても深いことを考えながら普段レッスンされているのですね。それは日本でコーチをされていた時から考えていたことですか?また、他に日本でのレッスンと異なることがあったら教えてください。

田所:もちろん日本でも考えながらレッスンをしていましたが、今ほどではありません。それは感じている責任が異なるからだと思います。正直な話、今は日本でアルバイトをしていた時よりもお客さんから多くのお金を頂いています。それもお客さんはどこかの会社にお金を払っているのではなく、全て私自身のレッスンの価値に対してお金を払って頂いています。これはとてもありがたいことであると同時に、もし私のレッスンに不満があったり、お子さんに怪我でもさせてしまうと、すぐに口コミは広まり、生徒が減ってしまうというリスクを抱えながら常にレッスンをしています。その環境が私の考え方をより変えたと思っています。

田中:なるほど。それはまさに自分で事業を始めないと分からなかったことということですね。今後のスクールについてはどのようにしていきたいと考えていますか?

田所:私はまだ大学生なので今年いっぱいで日本に帰る予定です。普通であればスポーツを習うのは長期継続で考えるものですが、期限があると知りながらも私のスクールに入ってくれた生徒に対しては本当に感謝しています。なので、今の生徒に対して帰るまでは毎回のレッスンを100%でやりきると決めました。また、今自分がやっていることをできる限りマニュアル化して、メキシコ人コーチを含めた誰かにやり方を引き継いでもらいたいと考え、模索中です。最後の仕事になる冬休みの短期教室は、普段地元のスイミングクラブに通っている方でも期間集中で参加できますし、まだ若干空きがあるので、今回のインタビューで興味を持ってくれた方がいれば嬉しいです。そして来年は就職活動が終わったら、子供達の成長をぜひ見たいので、またメキシコに戻ってくる時間も作れたらと思っています。

田所さんのバイタリティーの源とは?

田中:最後に田所さんにとってメキシコが今どのような場所なのか。それと、田所さんの行動力とバイタリティーはどこから来ているのか教えてください。

田所:私自身まだまだ未熟だと思っているし、自分で事業を作ったのも今回が初めてだったので嬉しかったことも大変だったことも含め多くの刺激がありました。その意味で自分を成長させてくれる場所が今のメキシコです。先日強盗に遭ったときは少し嫌いになりかけましたが。(笑)

環境は人を変えるとはよく言いますが、本当にそうであると思います。しかしながらその環境を選ぶのは自分自身なので、その環境を求める結果が行動力につながると思っています。「不言実行」という言葉を大切にしているのですが、私はこれを「とりあえずやってみろ」と解釈しています。それが新しい環境を自分自身で作り出す原点になっているとも思います。

田中:今日はお忙しいところありがとうございました。

田所:こちらこそありがとうございました。

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