メキシコで国産のワクチン製造、治験を開始!
メキシコでは、年内に国産の新型コロナののワクチンを完成させようとしています。
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領によると、新型コロナウイルスに対するメキシコのワクチンの人に対する治験を4月に開始すると発表しました。
このワクチンは2020年3月に開発を開始したもので、通常、鳥類が罹患する感染症であるニューカッスル病(rNDV)の組換えパラミクソウイルスをベースにしています。
メキシコ政府は、民間の製薬会社であるAvimex社と協力して、今後数ヶ月の間に行われるワクチンの開発段階の概要を発表しました。このスケジュールでは、2021年の最終四半期に使用許可を申請する予定です。
Patriaを作った会社ってどんな会社?
今回の新型コロナウイルスのワクチンを作っているAvimex社はどのような会社なのでしょうか?
Avimex社は実は動物用医薬品の開発とその販売を専門とするメキシコの企業です。もう少し説明すると、1952年に設立された民間企業で、主に動物の健康のための生物学的、薬学的、消毒剤、マイコトキシン解毒剤の研究、開発、製造、輸入、輸出、販売を行っています。
つまり、人が感染するウイルスに対する製薬は今まで行っていないんですよね。
今回のプロジェクトの要旨は下記のとおりです。
- 新型コロナウイルスに対するメキシコ国産ワクチン「Patria」のAvimex®プロジェクトは2020年3月にスタート。このワクチンは、ニューカッスル病パラミクソウイルス(rNDV)をベースにしている。
- Avimex®プロジェクトは、メキシコ政府と提携し、CONACYTが中心となって、2021年の第4四半期までにメキシコ国民にパトリア・ワクチンを提供することを目指している。
- 開発中のワクチンには、アイカーン医科大学マウントサイナイ校(米国ニューヨーク州)の技術と、テキサス大学オースティン校のHexaProタンパク質が使用されている。
- 現在までに、IMSS、UNAM、INERなどの機関がプロジェクトに参加しており、COVID-19ワクチンのヒトに対する国内および国際的な規制要件を完全に満たした上で、4月にヒトでの臨床フェーズを開始することを目指している。
なんだか少し分かりづらいですよね。
つまり、今回のプロジェクトはアメリカの大学の協力の元、ニューカッスル病という鶏を始めとしたウイルスのワクチンをベースに応用したものになっています。
ニューカッスル病ウイルスが新型コロナウイルスに対するワクチンとして有効である可能性があると判断したため、このプロジェクトに踏み切っているということです。
この種のワクチンはベクターワクチンと呼ばれ、遺伝子組み換えウイルスを媒体として、必要な情報(この場合はSARS-CoV-2の情報)を運び、COVIDの原因となる実際のウイルスが体内に侵入しようとしたときに、体が自己防衛できるようにするものです。
ニューカッスル病(ニューカッスルびょう)は鳥類のウイルス性感染症で、ニワトリをはじめ多くの家禽や野生鳥類に感染する。 日本も含めた多くの国に在来する病気で、伝染性が高く、経済的にも重大な影響を与える。 日本ではニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥に関して家畜伝染病予防法の法定伝染病に指定されている。
Wikipedia
この予防接種の開発プロジェクトは、国立科学技術評議会(Conacyt)が主導し、公的資金で1億5千万ペソの予算が組まれました。
(Avimex社が1500万ペソ、Conacyt社が1億3500万ペソを出資しています。)
このPatriaワクチンが承認を得るためには、大きく分けて4つあります。
- 2020年4月に第一治験
- 2020年6月、7月に第二治験
- 2020年8月~10月に詳細な分析を行う
- 2021年承認
このような流れになります。
まず初めの治験ですが、Conacyt社のディレクターであるMaría Elena Álvarez-Buylla氏が発表したように、このプロジェクトには55歳までの100人の人々が参加する予定で、この治験に参加するボランティアの募集を開始したと発表しました。
Patriaというワクチンの名前の由来
それでは、Patriaというワクチンの由来は何なのでしょうか?
ロペス・オブラドール政権が名付けた「パトリア」ワクチンの由来について、これまでにわかっていることをまとめました。
ラモン・ロペス・ベラルデの詩に由来していると、ロペス・オブラドール大統領は説明しています。
Ramón López Velardeは、メキシコの詩人です。彼の作品は、フランスの影響を受けたモダニズムに対して反発し、純粋にメキシコ的な題材と感情の経験を表現しメキシコの国民的詩人と言われるほど、メキシコを代表する詩人になりました。
彼の代表作が、このワクチンの名前の由来となった”La suave patria “です。彼の作品、特に “La suave patria “は、革命後のメキシコ文化の究極の表現として紹介され、メキシコを思った祖国の詩として、今回このワクチンの名前に採用されたのです。
メキシコ国産の新型コロナワクチンを生産する意義
それでは今回のプロジェクト意義は何なのでしょうか。
まず、国産ワクチンを持つことによる自立化です。
このコロナ禍において、国産のワクチン、国民に与えることができるワクチンを保有することは大きな外交カードにもなります。現に米バイデン大統領が就任した時メキシコのロペスオブラドール大統領が首脳会談を行った時、ワクチンの依頼をしましたが断られてしまいました。
メキシコではないですが、日本の菅総理大臣も訪米中にファイザー社のCEOと面会をするなど、ワクチンが重要な外交カードになっていることはよくわかります。
ロペスオブラドール大統領は「この名前のワクチンは、私たちが常に自立すべきだと考えていることを意味しています。それは、グローバル化した世界の中で自らを閉ざすことではなく、基礎的な部分、基本的な部分で自給自足しなければならないということです」と火曜日の朝の会見で述べました。
“Una vacuna con ese nombre significa que debemos siempre en pensar en ser independientes, que nos conviene ser independientes. Desde luego no se trata de cerrarnos en un mundo globalizado, pero debemos de ser autosuficientes en lo fundamental, en lo básico, alimentos, medicamentos, energéticos y muchas otras cosas, no todo. Hay que intercambiar productos, mercancías con otros países, pero tratar de no depender tanto del extranjero”.
しかし、このワクチンは、その名前とは裏腹に、ニューヨークのアイカーン医科大学マウントサイナイ校の技術と、テキサス大学オースティン校のHexaProタンパク質を用いて開発されたのは内緒…。
実際には共同で行うワクチンであって、海外の先行研究によって開発していた技術を利用しているため、開発の過程のすべてをメキシコで行ったわけではないことに対して、メキシコ国内からは100%メキシコ産と言えないのではとの声も上がっているようです。
2つ目のメリットは、ワクチンに対するコスト削減があります。現在メキシコではすべてのワクチンを輸入に頼っていますが、Cocacytの発表によると最も高価な輸入ワクチンのコストが1回あたり525ペソであるといいます。
それに対し、メキシコでのワクチンの製造コストは55ペソであると言及されていました。
最後に
いかがでしたか?実際どのようなワクチンになるか分かりませんが、早く実用化がされると、メキシコにとってかなり良い出来事になりますね!
引き続き、新型コロナウイルスの動向を見守っていきましょう。