USMCAがメキシコの産業界に与える影響や内容|コロナ禍と絡まって直面する課題とは

NORIのメキシコ!ビジネストレンドメキシコのニューノーマルとビジネス環境の変化(前編)

こんにちは。あなたの会社のメキシコ事業を応援する企業、プロデンサの川村と申します。

私は、2001年からメキシコに在住しています。また、今のお仕事の前は、日系企業でのべ12年勤務した経験もあります。

ささやかながら、私の経験が日本とメキシコの良き橋渡しになってくれればと思います。宜しくお願い致します。

1996年~98年にグアナファトに留学し、 卒業後2001年からメキシコに住んでいます。日系自動車部品メーカー勤務の後、『メキシコに物を売りたい』『メキシコで事業をしたい』人や企業さんのお手伝いをしており、並行して公式文書の翻訳や、同時通訳もやっています。いつでも相談に乗ります。

さて、以前は「メキシコ!ちょっとだけフリーク」というタイトルで、メキシコ生活に関するコツやポイントを6回に亘って説明しました。

今回で4回目です。

米国でのトランプ政権誕生メキシコでの政権交代や、ようやく今年7月に発効にこぎつけた米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)、そして今年に入ってからの新型コロナウイルス騒動などで、メキシコを取り巻くビジネス環境は以前と大きく様変わりしています。

また、5月にお伝えしたデジタル化、そして前回のミレニアル・センテニアルがこうしたデジタル媒体を用いることにより、世界全体のビジネス環境に与えている影響も無視できなくなっています。

今回は、今月と来月に跨ってこうした事情について、概略ではありますが説明しますので、理解を深めて頂ければ幸いです。

▼メキシコのデジタル化・若者が国に与える巨大な影響とは▼

USMCAとは

1994年1月に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)について、米国で就任したトランプ大統領が大幅に見直しを主張したことから、新たにUSMCAとして協定がカナダ、米国、メキシコの間で結ばれ、各国議会の批准や、昨年12月に内容の一部修正を通して、今年7月1日に発効しました。

協定の細かい内容についてはこのメヒナビでは触れませんが(本稿の最後をご覧下さい)、20年以上に亘ってメキシコが、最大のビジネスパートナーである米国との関係において大きく活用してきたNAFTAからUSMCAへの変更は、特に自動車産業などメキシコの基幹産業での大きな見直しが入ることを意味します。

そしてこのことは、自動車産業にぶら下がっているその他の製造業、サービス業などにも大きく影響を及ぼし、変化の波となって現れていきます。

USMCAとNAFTAの大きな違い

USMCAがNAFTAと大きく違う点は、概ね以下の通りです。詳細は非常に複雑で、貿易に携わっている方々でも簡単には理解出来ません。

 貿易のことが分からない方でも理解できるように、主な内容のみ記載します。

  1. 協定批准国(米・加・墨)で生産されたものかどうかを判断する基準(原産地規則と言います)が、従来と異なり品目別(例えば、自動車)になった。
  2. 自動車(乗用車、ピックアップトラックなど)については、大まかに言うと費用の75%が、批准国で生産されているものでなければいけなくなった(NAFTAでは62.5%)。また、部品の中には必ず批准国で生産されていなければならないものがある。
  3. 自動車の構成に多く使われている鉄鋼やアルミニウムの70%は、批准国で生産されていなければならない。
  4. 自動車を生産する付加価値のうち40%以上の作業は、高賃金地域(16米ドル以上)で行われている必要がある。

 それ以外には、EコマースなどNAFTAには存在しなかった概念や、従来の条文をアップデートしたものになっています。

さて、これまでNAFTAのルール下では、簡単に言うと、

自動車メーカーなど

アジアから安い原材料や部品を持ってきて、賃金の安いメキシコで組み立てると『NAFTA製』になるから安上がり。さあ、いざメキシコへ!

ということで、日本企業も含め世界中の自動車メーカー、自動車部品メーカーがこぞってメキシコに進出してきました。

私も当時は、メキシコが全く分からない方々を色々な工業団地や街に案内してメキシコについて知識を共有して頂いたり、自らの人生を語ったりと、本当に楽しい時代でした。

 ところが!これに米国のトランプ大統領が「待った」をかけることに。

米国第一主義」を掲げるトランプ大統領は、端的に言えば

賃金の安いメキシコに米国から製造拠点が逃げてしまった。NAFTAは最悪の協定だ

と主張し、その見直しを迫ったわけです。

もちろん、NAFTAそのものが既に発効から20年以上経過している古い協定で、現在のビジネス・社会情勢に合っていない条項や、また現代に合わせてアップデートが必要な条項があったのも事実ですが。

USMCAを経てメキシコの産業界はどうなる?

トランプ大統領は昨年も、中米からの移民がメキシコを通過して米国を目指していることに目を付け、メキシコ製品に関税を掛けようとするなどして、またツイッターなどでも再三メキシコにプレッシャーをかけてきました。

したがい、メキシコを外から見ているとあたかも「トランプ大統領に言われっぱなしのメキシコ」というイメージになります。

しかし、今の世界のビジネス事情はそんなに単純ではありません。

大きなものには、次の二つがあります。

NAFTA体制で生産ラインは複雑に

NAFTA体制の下、北米圏での財・サービスのやりとりは国境を複数回往復する仕組みが出来上がっています。

たとえば自動車について言えば、最適な生産体制(コスト含め)では、自動車が出来るまで部品が米国とメキシコを8往復するとも言われています。

また、各国企業は既にメキシコにも多額の出資を実施済。そう簡単にメキシコからカナダ、米国に工場を移転するようなことは出来ません。

コスト上昇で困るのは消費者であるアメリカ国民自身

出来上がった自動車が最も大量に購入、消費されるのは、今回トランプ大統領がうなり声を上げたほかならぬ米国です。

トランプ大統領は、米国に製造拠点の多くを戻そうと躍起になっていたわけですが、労務費の高い米国で全ての物を作ったら、それは全て販売価格に転嫁されて、米国民の懐を直撃することになりかねません。

それは、米国の産業界も重々承知のことです。

結局のところ、「メキシコから製造拠点が大量撤退!」のような状況は発生していません。

でもUSMCAのルールにより多くの会社がグローバルの生産体制を見直しする必要が出ているのは事実です。

また、中長期的に見れば世界全体で「自動車」というものの需要が、これから右肩上がりで伸びるかどうかは甚だ疑問のあるところですね。

折しも「ニューノーマル」下では、先日も触れましたがデジタル・トランスフォーメーションが進み、「人の移動」についての従来の考え方を大きく揺さぶっている最中です。

 一方で気になっている部分としては、メキシコの現政権(連邦政府)の動きを見ていると、

どう考えても経済面、特にこれまでの政権が推進してきたような外国投資の誘致や、経済を主体的に活性化させようとする動きの、プライオリティが下がってしまっていることがあります。

現ロペス・オブラドール政権は、前政権が設定したメキシコ各地の「経済特区」のプロジェクトも中止、また連邦経済省の投資誘致促進機関であったプロメヒコの世界中の拠点を、昨年2月15日で閉鎖してしまいました。

日本のプロメヒコの拠点も東京にありましたが、メキシコの情報を直接得られる機関が減ってしまったことは日本企業にとって大きな不安材料です。

ただその分、我々のようなメキシコの民間企業が「メキシコについてもっと知ってもらいたい」という宣伝活動を頑張るためのモチベーションが上がった、という見方もできるのですが。

最後に~USMCAをもっと知りたい!という方へ~

 我々プロデンサでは、貿易ルールコンプライアンスを始めとして、メキシコで事業を行いたい、また今のメキシコ事業においても経理、人事、環境安全衛生や市場調査、その他いろいろな面で企業さんのお手伝いをすることが出来ます。

 「メキシコで物やサービスを販売してみたい」という方、「メキシコで製造を行うための事業設立や、業務提携などについて知りたい」という方、そして「現行事業のお手伝いが必要」という方は、是非私宛(nkawamura@prodensa.com)連絡を頂ければと思います。

次回は、続編として「企業コンプライアンスの大切さ」「企業イメージの社会的影響」などを、ニューノーマルの観点から触れてみたいと思います。

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Nori
メキシコ事業コンサルタントです。 1996年~98年にグアナファトに留学し、 卒業後2001年からメキシコに住んでいるおじさんです。 以前、現地日系自動車部品メーカーで延べ12年働きました。 妻はメキシコ人です。 歳なのでトルティージャも米も最近は控え気味です。 何かご相談があれば、いつでもどうぞ。